前回の記事で『Role & Roll』へのインタビュー掲載をご報告しましたが、私は普段、VRChatというバーチャル空間でTRPGを遊んでいます。
その中でも特に好きなシステムが、今回紹介するマギカロギアです。
今回は、私が思う、マギカロギアのここが最高に面白い!というポイントを5つに絞ってご紹介します。
VRTRPGサークル「CatsUdon工房」にて、マギカロギアのGMを中心に活動中。
圧倒的なプレイ実績 年間50卓以上のマギカロギアGMを担当。所属サークルでは2024年に年間100卓以上のマギカロギア卓が開催され、VR界隈での普及に貢献しました。
大型イベントでのGM選出 VRTRPGイベント「ばちゃこん2024 Day1」にて、河嶋陶一朗さんの書き下ろしシナリオ『文月文庫と五つの選書』のGMに選出されました。
オリジナルシナリオ制作 「ばちゃこん2024 Day4」にて『お困りごと解決し隊』、翌年「バチャプレ」にて『おかしの木』など、自作シナリオでのイベントGMも多数経験しています。
これだけ回しても飽きないどころか、どんどん好きになっていく。そんなマギカロギアの沼へ、皆さんをご案内します!
まずは基本から!マギカロギアってどんなゲーム?
具体的な魅力に入る前に、まずはマギカロギアが基本的に何をするゲームなのかを簡単にご説明します。本作は、主に現代を舞台とした、魔法使いもののTRPGとなります。
このゲームの敵は、禁書(ベイン)と呼ばれる意志を持った危険な魔導書です。これらが、世界中で魔法災厄という形で様々な悪さを引き起こします。人々の言動に影響を与えたり、行方知れずになったりなど、内容は様々です。
それを阻止するため、キャラクターたちは魔法使いのチームとして分科会(リーディングサークル)を組みます。
シナリオの基本的な流れは以下の通りです。
- 〈禁書〉が力を分けた存在である断章(フラグメント)を探し出す
- それらを倒すなどして回収する
- 最終的にラスボスである〈禁書〉本体を倒して封印し、事件を解決する
勿論、例外的なシナリオもありますが、スタンダードなものであればこの流れで進行します。本ブログで公開しているシナリオ『常闇の手帳』でも、この基本形式を採用しています。
事件を追って、敵の手下を各個撃破し、最後にボスを倒すという形で、やるべきことが明確なので、TRPGに慣れていない方でも迷わずに遊べるのが特徴です。
これ一冊あれば、すぐにマギカロギアの世界で遊ぶことができます!
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それでは、ここからは私が思う「マギカロギアの何がそんなに面白いのか?」という沼の深さを語っていきます!
1. 言葉の響きがカッコ良すぎる!用語と呪句
最初に挙げたいのは、このゲームが持つ独特の言葉のセンスです。
例えば、前述の基本説明に登場した〈禁書〉は「ベイン」と読みます。多くのキャラクターが所属することになる魔法使いの組織は、〈大法典〉と書いて「コーデックス」と読みます。
この漢字にカタカナのルビが振られているのが、とても好きです。用語以外でも、蔵書(魔法)の名前にも、それぞれカタカナ読みがあります(【攻則】と書いてアサルトマニュアルなど)。
特に覚える必要はなく、遊ぶ分には漢字読みで問題ありませんが、回数を重ねるうちに自然に読めるようになってきて、より楽しくなってくる感覚があります。
そして、何より最高なのが、呪句(インヴォケーションヴァース)です。呪文を使う際など、特定のタイミングで使用でき、蔵書ごとに設定された詠唱を読み上げることで、ボーナスを得られるというものです。
ルールブックには蔵書ごとに呪句の詠唱内容が書かれているのですが、なんと、そのキャラクターが唱える詠唱を、プレイヤーが自由に設定することも可能なんです!
オリジナルの呪句はキャラクターの個性を出しやすく、そこも個人的に楽しいポイントです。私は、基本的にオリジナルの呪句を採用しているため、キャラクターごとに色々な呪句があります。その中から、いくつかピックアップしてみました!
それぞれ、別のキャラクターが使用する呪句になります。
【オリジナル呪句の例】
- 雨よ、我が友を守護する欠片となり降り注げ!
- 唸れ轟雷、轟け、雷華の魔剣。
- 世界よ、循環せよ。緑が廻るそのときこそ、始まりの道筋なり。
- これがドヤ顔狼さんの力だよ!
- 見落とすな。観察せよ。全てを見通す我が心眼。
- そう、これは存在した出来事、今それを思い返そう
- 全てを滅する紅き刃よ、我が元型と共に、闇の狭間へと消え去れ!

ビシッと決めているものもあれば、雰囲気の違うものもあり、キャラクター表現の一種として楽しめますよ。
ルールブックに記載されている呪句も、良いものが沢山あるので、ぜひ読んでみてください。
2. 魔法使いなら何でもアリ!キャラ作成の自由度
マギカロギアのプレイヤーキャラクター(PC)は基本的に魔法使いです。というと、ローブを着て杖を持った人を想像するかもしれませんが、このゲームは違います。
表の顔、つまり、世間でどう過ごしているのかは、何でもありなんです。
どんな設定であっても、魔法使いという共通項さえあれば成立します。そのため、自分のプレイスタイルや好きを詰め込んだキャラクターが非常に作りやすいのです。世界観に沿ったキャラクターも良し、自分が好きなキャラクターの要素を入れた人物でも良しと、できる幅の懐が広いのもオススメポイントです。
年齢に関しても非常に自由度が高いのが特徴で、PCの初期作成での強さとなる第3階梯の段階で肉体的には不老不死であり、寿命と言う概念からは開放されています(ただし、このゲームでの体力にあたる【魔力】が0になるとPCは死んでしまいます。復活手段はありますが、不死なのは平常時に限るということです)。つまり、表向きの年齢や見た目と、実際の年齢が離れていても、何ら問題ないということです。
そのため、3~4桁年齢で学校に通っていても良い(公式で年齢4桁の表の顔が小学生のPCが登場している)し、世間に馴染める年齢であれば、その通りに過ごしても構わない。
ですが、通常の人間とは違う性質上、どこかのタイミングで、表向きの生活圏や人間関係を変えなければならないときが来るかもしれません。この世界における魔法使いはそういった存在になります。
また、表の顔の自由さ以外にも、魔法使いとしての経緯を示す経歴も粒ぞろいです。
【経歴の一部を紹介!】
訪問者(ゲスト):魔法災厄など、何らかのきっかけで、後天的に魔法の力に目覚めてしまった人物。
異端者(アウトサイザー):吸血鬼、妖怪、あるいは猫など、本来人間ではない種族が〈大法典〉との協力関係を結んでいる。
外典(アポクリファ):元〈禁書〉などの魔導書の類。拘束魔法(ギアス)によって縛られ、〈禁書〉回収をさせられている。
など計6種類
このように、様々な経歴が存在し、それぞれ専用の魔法が存在します。魔法の構築によるキャラクター表現も見どころです。
他にも、〈大法典〉内の組織、機関(オルガノン)に所属できたり、後のシナリオ集や追加データで加わった要素として、異種族や魔法料理人、魔法医師、〈大法典〉以外の魔法使いなどもあり、性能、設定面共に豊富となっています。
【実例】元・ラスボスが小学生!?外典という選択肢
キャラメイクの自由度を象徴するものとして、私が実際に使用しているキャラクターの一人イリス・エレクトラを紹介します。
彼女の魔法使いとしての経歴は、外典(アポクリファ)です。これは、かつては敵である〈禁書〉だった存在が、経緯で味方になったという、非常にロマンのある経歴です。
【キャラクター設定:イリス・エレクトラ】
表の顔:小学生/占い師(ネット上で活動)
魔法名:電脳後人の伝令者。伝令者は「メッセンジャー」と読む。
正体(元禁書):『電脳の後人たる伝令者』と呼ばれた魔導書
能力:電子機器を通じて、未来からの警告メッセージを受信する
普段の様子:寝ながら意識をPCに移して24時間オンラインゲームに勤しむなど、重度のゲーマー

魔法名にある後人というのは後世の人という意味で、後世(未来)から警告を受け取る電脳の存在という意味が込められています。
こだわりポイント:2007年の魔法災厄
彼女の設定を作る際、2011年に〈大法典〉へと採用されたという履歴書のような内容を作りました。元々彼女は、スマホの登場より前の時代、携帯電話(ガラケー)の普及率が上がってきた2007年頃に、無差別に未来の危機を通知して人々を混乱させる魔法災厄を引き起こしていました。
それが鎮圧され、数年後、その未来予知能力は役に立つと判断されて外典になったという訳です。天涯(ホライゾン)という、予知能力者などが豊富な調査機関に所属しています。
かつては人々を恐怖させた存在が、今は小学生のフリをして、なんならその電子適性を活かしてオンラインゲームの廃人になっている。元ラスボス級の存在が、日常に溶け込んでいる(あるいは溶け込めていない)というロールプレイができるのも、マギカロギアならではの楽しさです。
なお、電子の存在であるためか、物理的なものや、対面での会話は苦手となっています。普段は淡々とした口調で話しますが、ゲームの中に入り込むシナリオ参加時や呪句ではノリノリだったり、言動に変化があるのも特徴です。
ちなみに彼女は、私が最近作成したシナリオ『Irregular HighLink』にもNPCとして登場し、その電子能力を活かして、電脳空間の事件に関わります。
このように、実際の歴史や文化、自分の好きな要素(ゲーマーなど)を組み合わせて、世界に一人だけの魔法使いを生み出すことができます。
さらに世界を広げる!おすすめサプリメント
基本ルールブックだけでも十分に楽しめますが、記事内で触れた異種族や〈大法典〉以外の魔法使いなどで遊んでみたい方は、以下のサプリメント(拡張ルール)などがあると、さらにキャラメイクの幅が広がります!
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また、リプレイ(実際のセッションの記録本)を読むと、遊び方の雰囲気が掴みやすく、巻末にデータもついてくるのでオススメです。
▼リプレイ2本+追加データ!
読み物として楽しみながら、追加アイテムデータなども手に入ります。
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3. ドラマを生むアンカーシステム
私がマギカロギアで一番好きなシステムと言っても過言ではないのが、アンカーです。
魔法使いは因果をも書き換える強大な力を持っていますが、その力故に、世界の法則そのものから嫌われてしまっています。そんな魔法使いが人界(いわゆる、私たちが住んでいるような世界のこと)で因果に干渉する力を維持するためには、世界との結びつきを維持するための存在である、アンカーが必要になります。最初のアンカー(初期アンカー)は基本的に、魔法を使えない一般人(NPC)です。
「運命変転」と「運命介入」が生むドラマ
アンカーは、マギカロギアにおけるゲームシステムに深く組み込まれています。
そして、魔法使いが大きな失敗をしたり、魔法戦(戦闘)で敗北したりすると、その因果の流れがアンカーへと襲い掛かり、不幸な目に遭う運命変転が発生します。セッション(一回のシナリオ)中に、同じ運命変転を受けると、そのアンカーが死亡してしまうので、注意が必要です。
それら魔法的な災厄をなかったことにできる運命介入というシステムもありますが、判定失敗でPCが消滅したり、成功してもアンカーからPCに対する記憶が全て失われるなど、多大なリスクを負います。大切な人を守るために力を使った結果、相手から忘れられてしまう。そんな切ない展開が、システム側から自然な形で提供されるのです。
【実例】森の魔法使いと、迷い込んだ漫画家
PC(魔法使い):緑川美森(みどりかわ みもり)森の奥にある研究小屋で、ひっそりと暮らしている300歳越えの魔法使い。
アンカー(一般人):高浜和歌(たかはま わか)美森の小屋に時折訪れるようになった、ファンタジー系の漫画家。
【二人の関係性】元々、和歌が取材のために森を探索していた際、道に迷って偶然美森の研究小屋にたどり着いたのが出会いのきっかけです。そこで暮らす不思議な管理人(美森)に興味を持った和歌は、それから度々小屋を訪ねるようになります。
始めは美森も「僕の研究小屋に変な人間が来たな」と適当にあしらっていましたが、めげずに何度も訪れる和歌に対して、次第に興味と愛着を持つようになりました。〈大法典〉は魔法の存在を隠す方向性のため、美森は魔法使いとしての仕事や研究をそれっぽく置き換えて話しています。

気になる不思議な存在が、本当にファンタジーな世界で活動しているという、非日常(魔法使い)と日常(一般人)が交わる関係です。
日常の象徴として魔法に関わりのないアンカー、魔法の存在を知っているアンカーなど、その辺りの塩梅も自分で設定できるのが、初期アンカーの魅力の一つです。
それだけではありません。運命の力というものがあり、アンカーの願いを叶える約束をすることによって、一人につきセッション一回までPCに力を貸してくれます。後述する魔法戦での活用など、ゲーム的なリソースの役割も担っているということですね。そして何より、アンカーは消さない限り、次回以降のシナリオでも継続するのです。
つまり、シナリオ上で登場するアンカー「シナリオアンカー」であっても、関係を結べば、次のシナリオ以降も関係は続きます。別の事件が起き、再び願いを聞き、後にアンカーの元を訪れて願いを叶えたり、近況が語られたりする。
シナリオ単体で終わらない、キャラクターの人生や関係性が続いていく感覚がとても良い!
ちなみに、私はほぼ自作シナリオでGMをしているのですが、以前のシナリオに登場したキャラクターの願いを突然聞かれるということも発生します。その時の願いの内容をアドリブで考えるのも含めて、アンカー回りの処理はGMとしても楽しい時間です。
おまけ:他システムからのゲスト!?
(※某TRPGを知っている方向けの余談です)
「今まで自分たちを支え続けてくれたアンカーたちだ!」……という場面で、なぜか春日恭二が現れたり、春日王国が踊り続けた魔法戦は、涙(笑いの方)無しでは語れません。
マギカロギアのキャラクターではないはずですが、なぜか分科会のアンカーに彼がいたようです。一体誰が原因なんだ……(以下のシナリオ集から目を逸らしながら)。
CatsUdon工房シナリオ集合同誌「ディアボロス・クロスオーバー」
4. 戦略と運が絡み合う魔法戦が熱い
ストーリーやロールプレイだけでなく、戦闘(魔法戦)も非常に奥深いのが特徴的で、大好きなポイントです。運だけでなく、立ち回りや、相手の思考を読む戦略といった実力も問われます。具体的には、召喚や呪文、そして、後述するプロットにより熱い戦いが繰り広げられるのです。
楽しくてかっこいい名乗り!
魔法戦の開幕には、魔法名という魔法使いとしての真の名前を名乗ります。表向きの名前であるかりそめの名前と魔法名という、二つの名前をPCたちは持っている訳です。かっこいい名乗り口上を叫ぶシーンは、PC最大の見せ場の一つになるでしょう。
せっかくなので、〈断章〉戦での名乗りシーン例を挙げてみます。●●を魔法名、○○を〈断章〉の名称とした場合、以下のような感じになります。
「我が名は●●!〈断章〉○○よ、我が力を受け、その手中に収まるが良い!」
まさに名乗り!キャラクター視点でもカッコよく決めたい感じを出しています。
次に、過去の出来事から、理想を追い求める節がある私のPC「終全 始(しゅうぜん はじめ)」を例としてやってみると、以下のようになるでしょう。

「君の理想、君の望みを聞かせておくれ、全なる探究者(イニティウム・エンドウォーカー)がお相手しょう」
〈断章〉に語り掛けるような形になっており、また違った印象ではないでしょうか。このように、キャラクターごとに異なる名乗り方ができるので、そこもまた楽しいポイントです。
最初は名乗り方が分からなかったり、シンプルに恥ずかしいという場合もあると思います。ですが、心配いりません。「●●!〈断章〉、回収します!」くらいシンプルでも大丈夫です!ルール上必須なのは、魔法名を名乗ることだけなので、そこさえクリアできていれば問題ありません。
セッション中に、他のPCの名乗りを聞いて楽しんだりしながら、名乗りの雰囲気を掴んでみましょう。
余談:名乗りは「早い者勝ち」!?
ちなみに、マギカロギアの世界において、魔法戦は先に名乗った方が先攻になるという独特の処理があります(※状況によりますが、基本的には仕掛けた側が先攻です)。
ただの演出としてカッコつけるだけでなく、覚悟を決めて先に叫んだ方が、戦いの主導権を握れるという、ロールプレイとルールが直結している点が、私も大好きなポイントです。恥ずかしがらずに、堂々と名乗ったもん勝ちですよ!
多彩な魔法タイプ
マギカロギアの魔法戦では、様々な種類の魔法を使用できます。
召喚:多彩な効果を持つ元型(アーキタイプ)と呼ばれるものを召喚して戦わせる
呪文:相手にダメージを与えたり、自身を強化、相手への妨害など色々なことが行える
装備:一定のコストが貯まっていれば、持続的に効果を発揮する
これらを駆使して戦います。もちろん、戦闘以外で使える魔法もあります。こちらも非常に楽しい部分ではありますが、マギカロギア独自の部分を語るには外せない要素があります。
それが、攻撃・防御プロットによる熱い攻防です。
心理戦を生む攻防のプロット
マギカロギアにおけるプロットは、お互いに手持ちのサイコロの出目を秘密裏に決め、同時に公開することで進行します。〈断章〉はランダムでプロットしてくるため、運要素が大きいですが、〈禁書〉や他の敵の多くは思考してプロットしてきます。つまり、心理戦ということです。これがまた楽しい!

ここで、攻撃側と防御側がお互いに数字を出し合い、以下の読み合いが発生します。
攻撃側:相手と違う数字を出せば、攻撃を通せる
防御側:相手と同じ数字を出せば、攻撃を防げる
より沢山の攻撃を通すためにどうプロットするか、あるいは防御側が一点読みで防ぐのか。元型や魔法の効果も駆使して戦略を組み立てます。
また、PCが防御側の場合、受けるダメージが少ないに越したことはないでしょう。しかし、ここで面白いのが、防御に成功することだけが正解ではないという点です。
痛みを「力」に変えるジレンマ
魔法を使うためにはコストとなる魔素(マナ)が必要です。魔素の獲得方法は色々ありますが、この魔素を能動的かつ、まとめて獲得できるタイミングはそう多くありません。そして、それが狙えるタイミングこそ、魔法戦での防御プロットなのです。
実はこのゲーム、敵の攻撃を完璧に防ぐよりも、「あえて攻撃を受けてダメージを食らう」ほうが、多くの魔素を獲得できる場合があります。
防御しなかった(できなかった)数字は、そのまま魔力の源である魔素へと変わります(※残った数字に応じた魔素が発生します)。また、集中防御という、魔素を得られない代わりに、集中攻撃に強い防御手段もあります。つまり、攻撃側の思惑も含めて、以下のような心理戦が生まれるということです。
分散して防御:高い確率でダメージを減らせる。〈断章〉などプロットがランダムな場合、攻撃がばらける確率が高いため、比較的安全な択となる。ただし、集中攻撃されると、僅かなダメージ軽減しかできない。
特定の数値に固めて防御:ほぼ確実にダメージを受けるが、一気に欲しい魔素を得て大技を撃てる。元型などで、他の防御手段を用意できていれば、リスクを抑えられる。
集中防御:反撃のための魔素が貯まらず、読み外すと大ダメージを受ける、ハイリスクハイリターンの一手。だが、相手の集中攻撃に上手く合わせれば、無傷で凌げる可能性あり。完璧に決まると、非常に気持ち良い。
このジレンマが常にプレイヤーを悩ませます。「集中防御か?」「あえて被弾して魔素を貯めて、次のターンで決める?」「ここで読み外すとやられる!瀕死になる可能性は高いが、防御をばらけさせて確実に生き延びるべきだ」といった選択を、サイコロを隠しながら毎ラウンド迫られるのです。
場合によっては「相手の攻撃性能が高いから、こちらの攻撃で一気にリソースを使って速攻を仕掛け、防御の手番を回さない」という、敵の攻撃プロットまで手番を回させない戦略も発生します。
そして、これはGM側も同様ですね。「PCたちはこの魔素が不要だから、そこに集中攻撃!」「まだ【魔力】に余裕があるから、様子見で防御は分散がいいかな」「厄介な魔法の魔素を貯めさせないように、あえて被せに行こう」と、プレイヤー側とは違う形での戦略から来る心理戦を楽しめます。
また、「プロットの心理戦に影響する魔法があるけど、こっち(敵)視点だと知らないから、それは考慮せずにプロットしよう」というパターンや、PC側のリソース消費読みの集中防御という戦略もありますね。
この運と実力(読み合い)の塩梅が絶妙なんです。立ち回り次第では、格上の敵(高階梯の魔法使いや強力な禁書)にも勝つことができますし、油断すれば足元をすくわれます。
逆に、【魔力】の余裕がある場合、あえて攻撃をなるべく通さずに時間を稼ぎ、敵の攻撃を全く気にせず、後に備えて魔素貯めに勤しむというのも一つの戦略です(この場合、セッション時間が伸びないように、気を付けましょう)。
格上を倒し、ピンチを逆転するカタルシス
敵である〈断章〉や〈禁書〉は、強力な魔法を持っていたり、シナリオアンカーやPCたちを襲ってくるなど、狡猾にこちらの裏をかいてくる強敵もいます。シナリオによっては、〈書籍卿(ビブリオマニア)〉と呼ばれる、他の魔法使いとの戦いも待ち受けているでしょう。
ですが、厄介なことに、敵側の多くは、魔素消費を無視して強力な魔法を連発してくる理不尽な強さを持っています。しかし、ご安心ください。それを覆すための仲間やアンカーです。通常の魔法戦は、代表同士が戦う一対一の形式ですが、他のキャラクターは、立会人という形で、代表の魔法戦をサポートできます。防御の手伝いができたり、一部の魔法を使用できるため、それらを駆使して、代表の魔法戦を支えましょう。
そして、アンカーの力を借りれば、強力な攻撃や防御手段としても活用できます。前の項目で触れていた、アンカーの願いを叶えるという部分ですね。対象の願いを叶える義務を負いますが、達成すれば良いことがあります(もし達成できなかった場合、次回に義務が持ち越されるので注意)。
さらに、プロットによる読み合いに勝利すれば、そんな格上の敵の攻撃を華麗にいなし、カウンターを叩き込むことも可能です。
「相手はここぞとばかりに大技を狙っているはず……なら、あえて一点読みする!」
そんな漫画のような逆転劇が、システムのルールとして再現されているのです。運と読み合いの塩梅が絶妙なこの魔法戦、自分の選んだ召喚魔法で騎士や精霊を呼び出し、呪文で攻撃したり、敵を絡め取る。計算された戦略が噛み合った瞬間の爽快感は、他のシステムでは味わえません!
今回はマギカロギアの特徴的なプロット部分に焦点を当てましたが、魔法を駆使して戦略を組み立て、華麗に攻略したり、強力な元型を従えて攻防一体で攻めたり、コンセプト的な変わった戦法など、様々な攻略法が存在し、戦いを彩ってくれます。
5. 遊びやすさと育てがいがある
最後に、システムとしての遊びやすさです。
マギカロギアのシナリオはサイクル制というルールで進行します。今、調査や戦闘できる手番があと何回あるかが可視化されているため、「今なにをすればいいの?」と迷うことが少なく、初心者の方でもシナリオの流れが掴みやすいのが特徴です。
これは、シナリオを自作する場合でも同様です。
- 導入:依頼を受けて調査を開始する
- メイン:サイクルの中で〈断章〉などを調査・戦闘する
- クライマックス:事件の元凶を倒して解決する
この基本の流れ(フォーマット)ができているため、GMとしても非常に回しやすく、書きやすい印象を受けます。
また、長く遊ぶための成長要素も充実しており、シナリオを遊んで功績点を集めれば、魔法使いとしての階梯(強さのランクのようなもの)が上げられるのです。
【功績点の使い道】
使える魔法の数が増える(階梯を上げるメリット)
より強力な「元型」を使役できる(元型の強化や高コストの召喚魔法)
- アイテムの購入やその他の強化要素
こうして自分のキャラクターが目に見えて強くなっていくのは、RPGの醍醐味です。
他にも、蒐集魔法(コレクション)という、ロマン要素があります。これは、セッション中に、敵から奪うなどして手に入れた魔法をそのまま維持して、次のセッション以降にも使用できるというルールです。PCの成長方針と嚙み合うと、爆発的な力を発揮することもあるのです!
このように継続での遊びやすさや楽しみがあり、育成の楽しさも抜群です!
まとめ:マギカロギアはいいぞ
というわけで、私が思うマギカロギアの魅力5選は以下の通り!
- 用語と呪句のセンスが良い
- キャラ作成の自由度が高い
- アンカーとの関係性がエモい
- 魔法戦の戦略性が熱い
- 遊びやすくて育てがいがある
少しでも「面白そう!」「遊んでみたい!」と思っていただけたら嬉しいです。今回は触れていない要素や、他にも語りたい好きなポイントは沢山あるため、また書いていきたいですね。
特にVRセッションでは、元型を実際に召喚したり、声に出して詠唱したりと、魔法使いになりきる体験がさらに加速します。興味がある方は、ぜひCatsUdon工房のイベントや、マギカロギアの卓を探してみてください!
いざ、マギカロギアの世界へ!
記事を読んで「遊んでみたい!」と思った方へ、最初の一冊をご紹介します。
▼まずは手軽に始めてみたい方へ
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本作は、「河嶋陶一朗」「冒険企画局」「株式会社新紀元社」が権利を有する『魔道書大戦RPG マギカロギア』の二次創作物です。(C)河嶋陶一朗/冒険企画局/新紀元社










