本作は、「著:河嶋陶一朗/冒険企画局、新紀元社」が権利を有する『魔導書大戦RPG マギカロギア』の二次創作作品です。
(C)冒険企画局/新紀元社/河嶋陶一朗「魔導書大戦RPG マギカロギア」
シナリオ概要、全体公開情報
シナリオ名:光道と赤眼の裁き
使用ルールブック:基本のみ
推奨階梯:3
シナリオ傾向:シリアス、マギカロギア特有の出来事
プレイ人数:3~4名(4名が基本で、3名でも可)
リミット:3名4サイクル、4名3サイクル
プレイ時間:6時間~7時間程度(オンラインセッション)
PL難易度:★★★☆☆(星3.5くらいのイメージ)
GM難易度:★★☆☆☆
その他:1人は「外典」がいるとより盛り上がるかも
トレーラー
突如として六分儀市を襲う、断罪の光拳。破壊された街に散らばるのは、自身を戒める、過去の鏡。
鏡の被害は拡大し、ついには〈大法典〉の魔法使いの心をも蝕み始める。
光を携え彷徨う謎の影。魔法災厄……そして、かつての災厄を身に宿す「外典」の存在。
それは、この世界にどのような痕跡を残すのだろう。
その罪は、誰が裁く。光の先に待つのは、救済か、それとも破滅か。
魔導書大戦RPGマギカロギア「光道と赤眼の裁き」
今、あなたたちは、その真実を知ることになる。
シナリオ背景(GM向け情報)
※これ以降の内容は、本シナリオのネタバレを含みます。
危ういながらも〈大法典〉からの編纂を逃れた〈禁書〉赤眼の吊り墓標は、〈大法典〉を叩く機会を窺っていた。力も消耗し、禁書としての姿を取ることもできないため、他の禁書を利用して〈大法典〉に恨みを持つ人間を作り、味方を増やそうと考える。そこで、〈焚書官〉に身を寄せることを思いつく。
魔法を消そうとする〈焚書官〉で自身が〈禁書〉だとバレればそれこそ自身が消されかねないが、力を失っていることでそのリスクは抑えられ、それ以上に、魔法への憎しみを持つ人物を探せる可能性が高いと考えた上での行動。
〈焚書官〉としての活動と称して他の〈禁書〉を探した結果、石原ケイトの元となった〈禁書〉悪意と憎しみの旋律を発見し、それを解放することに成功。
そうして、〈禁書〉の能力による悪意や憎しみの増幅により、六分儀市の治安が悪化し、突発的な事件が多発。
そんな中、とある地元の老舗会社が、経営難に陥っていた。そこは、天野友美が融資を担当していたのだが、住吉銀行側の判断により、その融資を打ち切らなければならなかったのだ(〈断章〉魔鏡との魔法戦で天野友美が呟いていた出来事)。
そして、融資を断られた会社の社員たちが、〈禁書〉悪意と憎しみの旋律の影響を受けてしまい、彼らを強盗という強引な手段へと走らせた。結果として、宮崎奈々の家族が犠牲となってしまう。その日、奈々は出かけていたことで直接的な被害は免れたが、事が起こってから時間が経過しており、家族を助けることはできなかった。
また、周囲の治安悪化により、警察や救急車もパンク状態で、強盗に対する通報もされていない(されていたとしても、機能しないだろう)。それが、導入フェイズの最初のシーンである。
その後、悪意と憎しみの旋律による魔法災厄の様子を窺っていた赤眼の吊り墓標は、奈々に接触し、魔法災厄、そして〈禁書〉と外典の存在について教える。これにより、〈大法典〉と〈禁書〉悪意と憎しみの旋律に対する恨みを募らせ、〈焚書官〉へと誘った(マスターシーン2で描写された内容)。
このとき、奈々は自分だけが生き残った絶望から、彼女を魔法使いへと覚醒させている。本来であれば、〈大法典〉に事件の被害者として調べられた結果、魔法使いとして覚醒していることが発覚し、そのまま引き取られることになっていた。
しかし、事件直後に赤眼の吊り墓標が干渉した結果、〈大法典〉に対して魔法の力を秘匿させ、あたかも記憶操作をされた〈愚者〉のふりをして、実際には記憶操作を防いでおり、記憶を維持したまま、その監視下から逃れるように奈々の行動を変えた。
それから、赤眼の吊り墓標はチャンスを待ち、数年後、〈禁書〉が石原ケイトとして外典になったことを知る。それを奈々に伝え、実行犯として〈禁書〉光来する魔鏡の裁きを解放し、石原ケイトを苦しめるための復讐の道へと誘導したのだ。その際に、〈断章〉光来を彼女に憑依させ、力を増幅させている。奈々は自ら力を取り込んだと思っているが、実際の所は憑依させられているため、禁書中毒としては扱われない。
赤眼の吊り墓標としても、もし彼女が失敗した場合、自身の経緯と黒幕であることを伝えて、彼女を更なる絶望へと沈めることで〈禁書〉への転化(基本p201)を狙えるように、不要な消滅可能性を排除している。
そして、奈々は〈断章〉裁き、魔鏡の動向を監視し、PCたちが〈断章〉を回収する時に攻撃を仕掛けて自らの存在を意識させ、石原ケイトを調査した際には直接姿を見せている。当然だが、この行為はリスクが高く、その場で捕縛されかねない。しかし、彼女のケイトに対する恨みと〈断章〉の力を得ていることによる《光》魔法の強化で、侵入と撤退をこなしている。
この頃、赤眼の吊り墓標は、ハンドアウト記載の通り、強化した禁書を利用して魔法使いたちを殲滅するため、神社に作成した魔法門の力を利用して封印結界を奪い、禁書を東雲神社に憑依させることで封土にしようと画策している。
また、オリビニオス監獄の倉庫を潜伏場所として選択している理由は、以下の二点である。
①灯台下暗しの発想で、わざわざ選ばないだろうという裏をかく意図
②戦闘禁止の世界法則があるため、万が一発見されても、その場は撤退できる
その他の背景
柳生千里の【秘密】にある「東雲高校周辺で行方不明者が続出したり、死者が操り人形のように蘇ったり、暴力事件の多発」については、それぞれ、前作で登場した「常闇の手帳」、赤眼の吊り墓標、悪意と憎しみの旋律のことを指している。
愛沢楓が依頼人として登場、魔法使いたちのメンタルケアをしていた点については、本人も魔法災厄の影響で過去の嫌な出来事を見させられていたものの、本人が全く動じなかったことで、平常通りに動けたため。
彼女が円卓の依頼人、愛沢楓として話しているときに話し方が異なるのは、仲間として対等に接したいという気持ちが大きいから。円卓として依頼する建前上、個人としての意見とは分けて話している。
NPC解説・RPガイド
宮崎 奈々(みやざき なな)
魔法名:絶望の光(ライト・オブ・デスペアー)
年齢:17歳(高校2年生)5年前:12歳
外見
- ウェーブのかかったオレンジ色の髪(長さはミディアム)
- 瞳には、復讐に燃える黒く濁った憎悪の光が宿っている
- 5年前の夢では覇気のない目をしていたが、現在は刺々しい雰囲気を纏う
性格
- 本来は困難の中でも光を目指せる芯の強い少女(魂の特技:光道)
- 現在は復讐心により攻撃的だが、時折、年相応の脆さや悲しみが見え隠れする
シナリオ上の役割
表向きの黒幕(実行犯):〈大法典〉および外典(石原ケイト)への復讐者
悲劇の被害者:過去の魔法災厄で家族を失った一般人であり、赤眼に利用されている傀儡。
倫理的な問い:「被害者が加害者になった時、魔法使いはどう裁くのか」という倫理的ジレンマを突きつける存在。
行動原理
復讐:家族を奪った原因である禁書(ケイト)と、それを外典として管理、利用する大法典への憎悪が原動力
正義の暴走:自身の行いを、悪を裁く正義と信じている(〈断章〉光来の影響下にあるとき)
盲信:赤眼の吊り墓標を「真実を教えてくれた恩人」と信じ込んでいる
表の願い/裏の願い
表(自覚している願い):魔法使いと外典(ケイト)への断罪、魔法の根絶
裏(深層心理の願い):誰かにこの暴走を止めてほしい、家族にもう一度会いたい
※本来の彼女は、魂の特技である「光道」を持つ、困難の中でも光を目指せる少女です 。現在の姿は、赤眼と断章によって歪められたものです。〈断章〉光来の回収後や、彼女の本当の願いを聞くのであれば、裏の願いが見えるかもしれません。
RP方針
口調:攻撃的で刺々しいが、その裏には深い悲しみと脆さが見え隠れする。余裕があるときは冷徹に、追い詰められると感情が爆発するイメージ。
セリフ例:
「ふーん。あんた……外典なんだ。じゃあ、きっちり潰さないとね」
「私は、魔法使いを……外典なんて存在を使う〈大法典〉を許さない」
解説:本シナリオの表向きの黒幕であり、実行犯です。5年前、石原ケイトの前身である〈禁書〉悪意と憎しみの旋律が引き起こした魔法災厄により、自宅が強盗に襲われ家族全員を喪いました。彼女だけが生き残った絶望が、彼女を魔法使いへと覚醒させます。そして、そのやり場のない暗い感情に付け込んだ赤眼の吊り墓標によって〈焚書官〉の道へと引きずり込まれることとなるのです。
もし、赤眼の干渉が無かった場合、本編とは異なる道を選ぶことになります。魂の特技にある「光道」が、それを指し示しているのです。起こったことをどうにかできるものではないと思いつつも、もがき続け、その先にある光を目指す。それが彼女の元来の性質です。本来であれば、〈大法典〉に事件の被害者として調べられた結果、魔法使いとして覚醒していることが発覚し、そのまま引き取られることになるでしょう。
しかし、事件直後に赤眼が干渉した結果、〈大法典〉に対して魔法の力を秘匿させ、あたかも記憶操作をされた〈愚者〉のふりをして、実際には記憶操作を防いでおり、記憶を維持したまま、その監視下から逃れます(これが、マスターシーン3でケイトが困惑していた理由の一つです)。
彼女にとって魔法とは、理不尽な力であり、それを起こした〈禁書〉を外典として再利用する〈大法典〉と、元凶であるケイトに対して深い憎しみを抱いています。しかし、実際には赤眼の手のひらで踊らされているに過ぎません。悲劇の直後、復讐の道へと誘導され、実行犯の役割をさせられた上で、〈断章〉光来にも憑依させられ、赤眼の駒として扱われています。
彼女自身も、薄々そのことに気づいているかもしれませんが、自力で復讐を止めることはできません。GMは、彼女をただの倒すべき敵としてではなく、〈大法典〉が救えなかった過去の象徴として描写してください。
彼女にどう向き合い、どう裁くのか。このジレンマこそが、本シナリオの核となります。
石原 ケイト(いしはら けいと)
魔法名:戒めの旋律(レクイエム)
年齢:20代前半(外見年齢)
性別:なし
外見
- 短めに切り揃えた紫髪。少しメッシュが入っている。
- ラフなジャケットやパンク系の服装で、男性的な見た目。目つきは鋭いが、現在はどこか憂いを帯びている。
性格
- 言葉遣いは荒っぽいが、根は真面目で責任感が強い
- 現在は、魔法災厄による過去を映す鏡によって、罪悪感が強くなっている。序盤は特に、自虐的で脆い一面を見せる。
シナリオ上の役割
贖罪を求める元禁書:過去に〈禁書〉悪意と憎しみの旋律として魔法災厄を引き起こした張本人。現在は〈大法典〉の外典。
事件の引き金:奈々の憎悪の対象であり、今回の事件に大きく関係する人物
行動原理
罪悪感:自分の過去のせいで奈々が歪んでしまったことに深く傷ついている
贖罪と願い:奈々がこれ以上罪を重ねないよう、止めたいと願っている
RP方針
口調:一人称は俺で、「~だ」「~ねぇ」などを使う、少しがさつな口調。
対奈々:彼女の意見には反論せず、罵倒であっても甘んじて受け入れる
セリフ例:
「謝って許されることじゃねぇ。それでも、あいつは……奈々は止めてやらなきゃいけねぇんだ」
「そうだ。宮崎奈々……あいつは、〈愚者〉だったはずだ。被害者として記憶操作されて、魔法災厄のことは覚えていないんだ。そう、記録にもあった。一体、あいつに何があったんだ?」
願い
〈禁書〉のときに起こした魔法災厄の被害者に謝罪したい(宮崎奈々が登場する前)、あいつ(奈々)を止めてやってくれ
解説:本シナリオにおける、もう一人の重要キャラクターです。かつては〈禁書〉として魔法災厄を起こしましたが、封印され、現在は、〈大法典〉の管理下で貢献することで罪を償おうとしています。それと同時に、謝って許されることではないという意識も持っているものの、被害者に謝罪をしたいという気持ちが強いです。
現在は、様々な経験を通して、魔法災厄が起こす悲劇の中でも、魔法使いとして必死に生きようとしています。ケイトのハンドアウトを調査するときは、メンタルが弱っている描写を意図的に入れると、PCが「支えてあげなきゃ」と感じやすくなるでしょう。
魔法名「戒めの旋律(レクイエム)」について:ケイトの魔法名は、当初は〈禁書〉の名残である旋律と、敵を全部終わらせてやる(鎮魂歌=死)といった荒々しい意味として付けたのが始まりです。
しかし、魔法使いとしての任務をこなす中で、自身の罪の重さを痛感し、その意味合いは変化していきました。「自分の罪に対する戒めを奏で続け、誰かを救うことで少しでも贖罪にしたい」という悲痛な思いが込められるようになったのです。
基本的に聞かれない限り自分から話すことはない裏設定ですが、もし魔法名の由来を聞かれた場合や、ケイトの内面を表現する際の指針としてください。
赤眼の吊り墓標(せきがんのつりぼひょう)
年齢:不詳(外見は若い)
外見
- 白髪で、不気味に輝く赤い瞳を持つ。
- 細身で、褐色肌。服装は白を基調としている。常に口元に嘲るような笑みを浮かべている。
性格
- 残忍で狡猾。他者の不幸や絶望をも目的のために利用する、邪悪な性格。
- 自身の安全を最優先し、正面からの戦いを避ける卑劣さを持つ。
シナリオ上の役割
真の黒幕:全てを裏で糸引く、邪悪な〈禁書〉。
純粋な悪の魔導書:奈々とケイトの悲劇を生み出した元凶として、PCの怒りを一身に受ける存在。真相(奈々を利用したこと、ケイトの過去など)を嘲笑いながら語り、PCたちを煽る。
行動原理
愉悦と復讐:〈大法典〉への恨みを晴らすため、様々な策を弄し、実行する
狡猾な生存戦略:自身は〈禁書〉時代から弱体化しているため、正面対決を避け、人間や他の禁書を利用する。その上で、PCたちにとっても侮れない実力を持つ。
更なる計画:最終的には東雲神社の結界を奪い、封土にしようと目論む
RP方針
口調:常に相手を見下したような、ねっとりとした話し方。敬語を使うが、心がこもっていない。
煽り例:「あの子は本当によく働いてくれたよ。私の手駒としてねぇ」
勝利して撤退する時:「危なかったなぁ。このままじゃ、やられてしまう。まだ、〈禁書〉も残っているし、ここは逃げさせてもらうよ」
願い: 〈大法典〉への復讐を果たし、この地を封土とすること
解説:PC全員が「こいつだけは絶対に許さん」と思えるよう、徹底的に悪役に徹してください。赤眼の存在によって、同じ〈禁書〉だとしても、ケイトと全く異なり、一切の同情の余地がない存在であることを意識させましょう。
また、奈々の純粋な復讐心やケイトの贖罪の気持ちを「滑稽」「無駄」などと踏みにじる発言も多用します。彼へのヘイトが高まるほど、後のカタルシスが強まるでしょう。
強さとしては、〈禁書〉としての名前通りの【入滅】と【屍型】を持ち、結構強力です。激戦になることも少なくないため、残りの手番次第では、クライマックスフェイズまでに撃破できない場合もあるかもしれません。
もし、封土化の悪事が上手くいったときは、盛大にPCたちを煽り散らかします。強大なボスとして演出しましょう。
愛沢 楓(あいざわ かえで)
魔法名:光の救済者ヘザー
年齢:20歳
外見
- 柔らかなライトブラウンのロングヘア
- 赤いラインの入った、シンプルな白いローブ
- 少し小柄で一見大人しそうだが、その瞳には強い意志を感じられる。慈愛に満ちた表情。
性格
- 精神面に優れる人物だが、個人としては非常に面倒見の良い気質
- 使命感が非常に強く、人々や世界を守るのを当然のことのように思っている
シナリオ上の役割
精神力が高い依頼人(円卓):PCたちに任務を与える円卓の魔法使い。魔法災厄の影響で、嫌な過去を見させられている中でも動ける精神力を持つ人物。
セーフティネット:クライマックスでPCが敗北した場合、救援に向かう
導き手:エピローグでは、現場のPCたちが感じたこと、判断を尊重し、その成長を促す
行動原理
責務:今の自分にできること(魔法使いたちのメンタルケア)を努める
慈愛:困っている相手を放っておけない性格。個人的には、傷ついた人の心のケアを重視している。
RP方針
口調(公):円卓としての、テキパキとした敬語
口調(私):優しく包容力のある口調。「~だね」「~かな?」と柔らかくなる
導入時:PCたちに信頼を寄せ、〈禁書〉回収と犯人の捕縛という任務を任せる
個人としてのセリフ例:「ここからは私個人の意見なんだけど……あの二人を救ってあげて欲しいんだ」
願い:傷ついた二人の心(奈々とケイト)を救済する。序盤の場合、事件の解決。
解説:今回の依頼人である円卓の司書。彼女の持つ個人的な意見でPCたちを導いたり、エピローグでのやり取りなど、この物語を円滑に進めるために欠かせない人物です。エピローグでは、事件を通じてPCたちがどう感じたかを引き出す聞き手役として振る舞ってください。
本シナリオで発生する魔法災厄の内容と、エピローグでの裁きを決める展開の関係上、過去の嫌な出来事を見せられようが一切動じない、精神力が異様に高いかつ責任感のある円卓が必要でした。
彼女は元々私のPCなのですが、元々の性格が嚙み合っており、シナリオ上必要な人物像にピッタリと当てはまった故に、登場する運びとなりました。バッド系のルートでは、より本人の性格が出ている感じがします。
私のTRPGキャラクター紹介をするブログ記事でも登場しているため、より詳しく知りたい方がいたら、以下のリンクを覗いてみてください。
おすすめTRPGシステム5選&自分のTRPGキャラ8名を紹介
他シナリオアンカーたち
柳生 千里(やぎゅう せんり)
年齢:50代後半~60代(白髪交じりの短髪)
役割:導入1のアンカー。〈断章〉裁きの憑依先。本人は、善良な古本屋店主。
変化:普段は温厚だが、断章の影響で「世の中の悪」に対して攻撃的になっている。街の出来事に対するストレスを強く感じている。
セリフ例:「困ったものだ。なぜこの街ではこんなことばかり起こるんだ……。いえ、お客様の前でいう話ではありませんね」
解説:地元の古書店主です。何気に導入で万引きされかけていたかわいそうな人だったりします。街の治安悪化を憂いているので、何とかしてあげましょう。
天野 友美(あまの ともみ)
年齢:20代後半(きっちりしたスーツ)
役割:導入2のアンカー。〈断章〉魔鏡の憑依先。真面目な銀行員。
変化:過去の融資打ち切り(奈々の家族の悲劇に繋がる遠因)を悔やみ、精神的に追い詰められている
セリフ例:「私のせいだ。私が融資を断ったからあんな光景を……」
解説:住吉銀行の銀行員です。ただし、導入2での描写通り、彼女は外回りの役割が主となっています。〈断章〉魔鏡の影響による精神的な影響で休む人物が多発している中、代理で受付に回っているというのが、導入時点での状況です。
融資の打ち切りは銀行の意向であり、経営難という合理的な理由があるため、彼女に非はないのですが、これが奈々の家族の悲劇に繋がる遠因となっているため、〈断章〉魔鏡の影響を強く受ける形で憑依されています。
神月 みこ(こうづき みこ)
年齢:10代後半(巫女装束)
役割:導入3のアンカー。東雲神社の巫女。魔法門発見のきっかけ。
特徴:霊感のようなものがあり、神社の異変(魔法門の気配)に気が付く勘の良さを持つ
セリフ例:「なんだか、鳥居の真ん中……この辺りから、不思議な感じがするんです。気のせいだと良いんですけど」
解説:東雲神社の巫女で、魔法の一部を感じ取れる人物です。仕事中なのもあり、基本的に敬語で話します。彼女との出会いが、赤眼の吊り墓標の潜伏先に繋がる魔法門を見つけるきっかけになるため、出番以上に重要な存在です。
魔法を感じられる素養があるため、実は、魔法使いの素質を持っています。〈大法典〉や傍流学派へのスカウトを狙える対象だったりします。
導入フェイズ
GM向け情報:導入フェイズのシーン割り振りについて
導入時に、古本屋、銀行、神社での導入となることを提示し、導入1~3は一人ずつ、導入0と4は全員登場させて、各自シナリオアンカーを獲得する。
導入4のアンカーは外典PCを優先すること。例外として、外典PCが猟鬼の場合、魔法使いのアンカーを避けるため、他の導入に回す。
プレイヤー3名の場合、導入1~3は一人ずつ行い、シナリオアンカーは任意で選択する。外典PCがいる場合、導入4のアンカーを獲得させ、導入1~3で外典PCが登場したシーンのキャラクターは、シナリオアンカーとして扱わない。
導入フェイズ0(共通):惨劇の記憶
描写:ある日あなたたちが眠りにつくと、何処かの光景が浮かび上がる。魔法使いにはよくある夢だ。あなたたちは、直感的にこれが過去の光景だと分かるだろう。
少し騒がしいが、一見すると何の変哲もない光景。どこかの住宅街を歩く一人の少女の姿があった。全員《追憶》で判定(ここでは成功、失敗の判定のみで、ファンブルや魔素発生は無し)。
成功者は、その騒がしい音の元が喧嘩のような声であったりサイレンの音が複数箇所で発生していることに気が付く。
そして、場面が切り替わる。どこかの住宅街の一軒家。その中で先程見た少女が一人で立ち尽くしている。家の中は荒らされて物が散乱しており、そこには少女の家族と思しき者たちが倒れ伏し血だまりを作っている。
宮崎奈々(過去):「な、何が起こって……!?」
少女が後ろを振り返った瞬間、その映像は途切れてしまう。
解説:〈禁書〉悪意と憎しみの旋律による魔法災厄を夢で見るシーン。本編より前の時系列ということで、0番目のシーンとして記載した。彼女自身の執念と〈断章〉魔鏡の過去を映す効果が合わさり、PCたちの前に彼女の過去が夢として現れている。さらに、喧嘩のような声やサイレンの音は、〈禁書〉の能力による悪意や憎しみの増幅により、街の治安が悪化したことを示している。
その後、宮崎奈々の自宅のシーンへと移る。住吉銀行の融資を受けられなかった会社の人物が、〈禁書〉の影響を受け、強盗をしてしまい、その結果、彼女の家族が犠牲となってしまう。その日、奈々は出かけていたことで直接的な被害は免れたが、事が起こってから時間が経過しており、家族を助けることはできなかった。
また、周囲の治安悪化により、警察や救急車もパンク状態で、強盗に対する通報もされていない(されていたとしても、機能しないだろう)。
導入フェイズ1:光の鉄槌
描写:あなたが街を歩いていると、とある古本屋が目に入る。昔からある古き良き古書店といった雰囲気で、あなたも何度か訪れたことがある場所だ。そこから客と思われる人影が現れたと思った矢先、その頭上から拳のような光が降り注ぎ店の前の本ごと吹き飛んでしまう。驚いたためか、客はその場から逃げ去ったようだ。
すると店から店主の男性が姿を現して、あなたに声をかける。
柳生千里:「おお、大丈夫でしたか?いやぁ。困った困った。最近街の様子が変で本当に困っているんですよ。先程の現象を見ましたか?一体何が起こっているって言うんですかねぇ。あなたもお気を付けて下さいね。さて、また整頓し直さないと……」
店主は本を片付けながらため息をついていた。
「柳生千里(やぎゅう せんり)」との【運命】を1点獲得し、ハンドアウトを公開する。その後、シーンプレイヤーは魔力決定を行う。
導入フェイズ2:銀行の異変
描写:あなたは用事があって住吉銀行を訪れていた。しかし、何だか様子が変だ。いつもより店側の人間が少ない事に気が付く。人手が足りないのか、普段見かけない人も受付に回って対処しているようだ。中々業務が回り切っておらず、クレームを付ける客も現れだす。残っている銀行員たちはどうにか頑張っているようだが……。
天野友美:「すみません。現在、担当者はお休みしていまして……。はい。何故こんなに人がいないのか?申し訳ありません!」確か、この人も受付ではないはずだ。時折、街の中にある工場や会社に立ち入っている姿を何度か見かけたことがあったのを思い出す。
すると、〈大法典〉の六分儀市支部に来るように招集の連絡があった。あなたは、手早く用事を済ませてその場を立ち去った。
天野友美(あまの ともみ)との【運命】を1点獲得し、ハンドアウトを公開する。その後、シーンプレイヤーは魔力決定を行う。
導入フェイズ3:巫女の直感
描写:あなたはここ最近多くなっている魔法災厄に備えて、見回りをしていた。ちょうど東雲神社を訪れた時、掃除をしていた少女に声をかけられる。
神月みこ:「あっ、すみません。少しお話よろしいでしょうか?」
「私、神月(こうづき)みこって言います。ここ、東雲神社で巫女をしています。あまり人が通らない所だから珍しくてつい声をかけてしまいました」
「ここしばらく不思議な事が色々と起こっているじゃないですか。それで、最近変なもの?が見えるような気がして。気のせいだと良いんですが……」
「ごめんなさい。いきなり声をかけてしまって。私自身、不安になっていたのかもしれませんね。聞いて下さってありがとうございます」そうお礼を述べた後、少女は少し離れて掃除を再開した。
神月みこ(こうづき みこ)との【運命】を1点獲得し、ハンドアウトを公開する。その後、シーンプレイヤーは魔力決定を行う。
導入フェイズ4(全員登場):円卓からの依頼と外典
描写:あなたたちは、〈大法典〉の六分儀市支部に集められていた。そこには、真剣な表情をした円卓の魔法使い「愛沢楓(あいざわ かえで)」の姿があった。
愛沢楓:「既にお気付きだと思いますが、六分儀市で新たな魔法災厄が発生しています。拳のような光に、自身を戒める過去を映す鏡。この特徴は禁書【光来する魔鏡の裁き】の仕業と思われます。何者かが既に封印されていた禁書を解き放ったことが原因のようです。皆さんにはこの禁書の回収と、可能であれば犯人の特定及び捕縛をお願いします」
「それと、既に〈大法典〉の魔法使いにも被害が及んでいるようです。魔法使いには辛い過去を持っている人も多くいます。私は、過去を映す鏡で苦しめられている者たちの心のケアに回ることになって回収に出られないので、どうかよろしくお願いしますね」
一通り依頼内容を話すと、表情を和らげ優しい声色で再び話し始める。
「あっ、それと、ここからは私個人の見解なんだけど。被害を受けた魔法使いの中でちょっと気になる人がいてね。凄く苦しそうにしてるんだ。なんだか、放っておけなくて。でも、一人に付きっきりって訳にもいかないからね。時間があったら様子を見にきてあげて欲しいな」そう言って一人の魔法使いについての情報が渡される。
シナリオアンカー未決定のPCは石原ケイト(いしはら けいと)との【運命】を1点獲得し、ハンドアウトを公開する。その後、魔力未決定のPCは魔力決定を行う。
マスターシーン
マスターシーン1:深まる憎悪
条件:1サイクル目終了時に〈断章〉光来が未回収の場合
描写:何処かで渦巻く憎悪の感情が、より強くなった。とある断章の【憑依深度】が1上昇する。
※〈断章〉光来の【憑依深度】が1上昇する。既に存在が明らかな場合は、〈断章〉光来であることを伝える。
条件:2サイクル目(8シーン目)終了時に〈断章〉光来が未回収の場合
描写:何処かで渦巻く憎悪の感情が、さらに強くなった。とある断章の【憑依深度】が1上昇する。
※〈断章〉光来の【憑依深度】が1上昇する。既に存在が明らかな場合は、〈断章〉光来であることを伝える。
解説:〈断章〉光来が未回収のときに発生する【憑依深度】上昇イベント。内容はほぼ同じため、一つにまとめている。
マスターシーン2:赤眼の導き
条件:2サイクル目(8シーン目)終了時。ただし、マスターシーン6が発生した場合、これは発生しない。
描写:あなたたちは再び夢を見る。また、過去の映像のようだ。
以前の夢でも見かけた少女が、白髪で赤い眼をした人物と会話している。少女は覇気のない目をしていたが、しばらくすると赤眼の人物がその場を立ち去った。
少女が顔を上げて、赤眼の人物と反対の道を進む。その瞳には黒く濁った憎悪の光を宿していた。
夢の中で、全ての元凶と思わしき『赤眼の人物』の姿をはっきりと認識する。しかし、どこにいるのか、正体が何なのか、現時点では手がかりがはっきりしない。
解説:シナリオ冒頭の導入フェイズ0の直後、赤眼の吊り墓標が宮崎奈々に接触し、魔法災厄、そして〈禁書〉と外典の存在について教える場面。これにより、〈大法典〉と〈禁書〉悪意と憎しみの旋律に対する恨みを募らせ、〈焚書官〉へと誘った。
マスターシーン3:光の襲撃者
条件:石原ケイトの秘密が公開されたとき。ハンドアウト記載の《光》による判定を処理した直後。
描写:
宮崎奈々:「今のは、ただの挨拶代わり。それとも、もっと派手なのが良かった?」このような声と共に一人の少女が姿を現す。
「私、外典が大っ嫌いでね。いくら拘束魔法が掛かっていようが、禁書がまた表に出てくるとかほんともう最悪!とくに、あんたには……ね」とケイトの方を見る。
石原ケイト:「お、お前はあのときの!?だが、おまえは……。どうやってここに来たんだ?」
宮崎奈々:「それに答える義理は無いから。知りたければ調査してみれば?では、〈大法典〉の皆さんごめんあそばせ!」
周囲が強い光に包まれ、気がつくと少女はその場から居なくなっていた。
RPがあれば挟む。
少し落ち着いた頃、ずっと黙っていたケイトが口を開く。
石原ケイト:「あいつは、俺が禁書だった頃の魔法災厄で被害に遭った愚者だ。だけどそういった奴は記憶操作されるうえに、俺自身は封印されて身動き取れねぇ。謝りたくても謝る機会すらないんだ」
「外典として働くようになってさ、最初はなんでこんな事しなきゃいけねぇんだって思ってた。けどよ、何度か他の禁書と戦っていくうちに多くの人間たちがひどい目に遭うのを見てきたんだ。そしたら、どんどん俺自身がしでかした事の重大さに気が付いて……怖くなったんだ。そんな矢先にこれだ。当然の報いだよ」
「けど、これ以上他の奴らが傷つくのは見たくねぇ。それにあいつには俺と同じようになって欲しく無いんだ。頼む、どうかあいつを止めてやって欲しい!」
ケイトはそう言うと、深く頭を下げて懇願した。その表情からも本気でそう思っていることが伺える。
石原ケイトを調査したPCは、石原ケイトとの【運命】が1点上昇する。属性は任意。
さらに、宮崎奈々のハンドアウトが公開される。
解説:宮崎奈々の登場と、石原ケイトが外典として過ごす中で抱いた葛藤、そして、〈禁書〉として起こした出来事により揺らぐシーン。ここでは、奈々の持つ恨みと、ケイトの持つ罪悪感と葛藤をぜひ表現してほしい。
マスターシーン4:真実への入口
条件:東雲神社の魔法門を開いたとき
描写:あなたたちが魔素と〈断章〉魔鏡を神社の鳥居の前で掲げると、魔法門が開かれる。門を潜るとその先は石造りの建物だった。いくつかの箱や物が置いてあることから倉庫のような場所だろうか。鉄格子の窓から少し外が見える。そこには、大きな穴が空いた地表と星々が映っていた。
(猟鬼やオリビニオス監獄を知っているPCがいる場合)
「該当PC名」はこの場所を知っている。猟鬼の管轄であり魔法犯罪者が収容される牢獄「オリビニオス監獄」だ。
(猟鬼やオリビニオス監獄を知っているPCがいない場合)
あなたたちは、どこかで聞いたり学んだ知識として知っているかもしれない。猟鬼の管轄であり魔法犯罪者が収容される牢獄「オリビニオス監獄」その場所だと。
以下の情報を開示する。
異境「オリビニオス監獄」
シーン表、世界法則は、基本p230を参照
また、このタイミングで、ハンドアウト「赤眼の人物」が公開される。
※このタイミングで「赤眼の人物」の調査条件①が満たされる。
解説:オリビニオス監獄は月の裏にあるため、それを示すための描写が入っている。赤眼の吊り墓標は、倉庫の中でも特に人が入らない場所を狙って潜伏しているため、このシーンに他の猟鬼が登場することはない。
マスターシーン5:赤眼の嘲笑
条件:赤眼の人物の調査に成功したとき
描写:あなたが「赤眼の人物」の調査に成功すると、白髪で赤い眼を宿した人物が姿を現した。
赤眼の吊り墓標:「フフフ……。ここまで辿り着いたか〈大法典〉の魔法使いたちよ。本当にあの子はよく働いてくれた。私に協力すれば魔法災厄によって喪った家族を蘇らせてあげようと約束してやったら簡単に動いてくれたよ。実に滑稽だねぇ。その魔法災厄を起こした禁書を解放したのは私だと言うのにさぁ!」
「それだけじゃない。あの子が最も嫌う外典のような存在に拾われ、使われていた。それを知ったらあの子はどうなるだろうねぇ。これまで以上に絶望し、そして……。いや、少し喋り過ぎたかな?余計なことは喋らない主義でね」
「おっと。残念だけどこの場では戦闘が禁止されているんだ。悪いねぇ。でも、ここが見つかった以上、計画は断念せざるを得ないか。ここに居続ける訳にもいかないし……ね」
「この場は退散させてもらおう。けど、追う気があるのなら来るがいい。この私に勝てると言うのならばねぇ!」
そう言い残して、「赤眼の吊り墓標」は魔法門の外へと飛び込んだ。
解説:ここでの「余計なこと」というのは、魔法使いの〈禁書〉への転化(基本p201)のことを示している。
マスターシーン6:真の元凶
条件:マスターシーン2発生前に、全ての〈断章〉を回収したとき。
※このシーンが発生した場合、本来の「マスターシーン2」は発生しない。
描写:最後の〈断章〉を回収したその瞬間、あなたたちの脳裏に強烈なノイズが走る。それは〈断章〉たちが集まったことで発生した共鳴現象か、あるいは何者かの残留思念か。あなたたちは強制的に「過去の映像」をフラッシュバックとして見る。
そこには、あなたたちが夢で見た少女……過去の宮崎奈々と会話をする白髪で赤い眼の人物の姿があった。奈々は覇気のない目をしていたが、しばらくすると赤眼の人物がその場を立ち去った。
奈々が顔を上げて、赤眼の人物と反対の道を進む。その瞳には黒く濁った憎悪の光を宿していた。
そうして、映像が切り替わり、同じ場所。奈々が現在の姿となっている。〈断章〉光来を持って立ち去る奈々を見送った後、赤眼の人物は奈々に背を向けると、嘲るような笑みを浮かべて歩き出す。「フフフ……。本当にあの子はよく働いてくれそうだ。これで〈大法典〉への復讐の舞台は整った」
その足取りは、東雲神社の鳥居へと向かっていた。彼が鳥居の前で手をかざすと空間が歪み、その中へと姿を消していく。
意識が現実に引き戻される。あなたたちは直感する。実行犯である宮崎奈々は捕らえたが、彼女を操り、この事態を引き起こした真の黒幕は、まだあの「東雲神社」の奥に潜んでいるのだと。
解説:本来、2サイクル(8シーン)目終了時に見るはずだった夢を、断章回収時の共鳴として処理するシーン。元の夢よりも明確に「東雲神社の鳥居の奥(異境)へ逃げた」という情報を提示し、探索箇所を特定させる。
スムーズに進めた結果、マスターシーン2が発生する前に、〈断章〉を3つとも回収している状態になる場合がある。特に、魔鏡が最後に回収され、全部回収したけど魔法門だけが残っているというパターンの場合は注意が必要。
「何かよく分からないのがあるけど、犯人(宮崎奈々)を捕まえたし、〈断章〉も回収しているから行く理由がない」とPCやPLが考えるパターンが想定される。その対策として、黒幕が残っていること、その潜伏先として魔法門の存在を明示し、「まだ事件は終わっていない」ことを示す。もし、この描写を無視して〈大法典〉へと帰還、任務完了の報告をしようとする場合、マスターシーン7を使って引き留めを試みる。
マスターシーン7:外典の直感
条件:全ての〈断章〉を回収した後、東雲神社の魔法門に入らずに、〈大法典〉支部へ帰還、またはクライマックスフェイズに移行しようとしたとき。
描写:あなたたちが事態の収拾を報告、もしくは〈禁書〉の編纂儀式をしようとしたそのとき、〈大法典〉支部から緊急の連絡が入る。相手は円卓の愛沢楓……ではなく、外典の石原ケイトだ。
「おい!まだ帰還するな!……いや、すまねぇ。愛沢さんから通信機を借りた。どうしても伝えておきたいことがあってな」
通信越しのケイトの声は焦燥に駆られているようだ。
「宮崎奈々が捕まったことは聞いた。だが、妙なんだ。俺の中にいる『元禁書』としての感覚が警鐘を鳴らしてやがる。街に漂う悪意の気配が、まだ完全に消えてねぇ」
「俺が禁書だった頃、その力を利用されていたときに感じた、独特の『嫌な視線』だ。それが今、はっきりと東雲神社の方角から感じ取れる。……頼む、確認してきてくれねぇか? もしかすると、奈々を唆した『最悪な存在』が、まだそこに居座っているかもしれねぇんだ!」
解説:石原ケイトは現在〈大法典〉支部に保護されているが、元禁書としての勘で異変を察知したとしてPCを引き留めてくる。ケイトは宮崎奈々に対して罪悪感を抱いているため、「彼女を唆した真犯人がいるなら許せない」という動機があり、PCを動かす強い理由付けにもなる。
このシーンは、PLやPCが魔法門を調べずに終わらせようとする場合の、最後の保険となる。それでも魔法門を調べないという選択を取るのであれば、容赦なく赤眼の吊り墓標のハンドアウトに記載された、悪事を実現して構わない。
ハンドアウト
柳生 千里(やぎゅう せんり)
概要:街の通りで長年、古本屋を営む店主。今回の魔法災厄を何度か目撃しているらしい。
柳生 千里 秘密
彼はここ最近、街の治安が荒れていることに対して嫌気がさしていた。東雲高校周辺で行方不明者が続出したり、死者が操り人形のように蘇ったり、暴力事件の多発など他にも様々だ。
その心に付け込んだ〈断章〉裁きに憑依され、無自覚に裁きの鉄槌を与えている。犠牲者は周囲の店の万引き犯や、通りの近くで発生していたひったくり犯であった。
天野 友美(あまの ともみ)
概要:住吉銀行で働いている銀行員。主に六分儀市内に存在する会社への融資を担当している。
天野 友美 秘密
彼女は、かつて融資を断って潰れてしまったとある小さな会社のことを気にかけていた。しかし、元々経営状況が芳しくなかったこともありそれ自体は不思議な話ではない。だが、なぜかその過去が強く後ろ髪を引くのだ。
彼女は〈断章〉魔鏡に憑依されており、その過去から目を背けるなという言葉を鏡写しの影が訴えかけていたようだ。また、〈断章〉魔鏡はとある魔法門を使用するための「鍵」となっている。
神月 ミコ(こうづき みこ)
概要:東雲神社で働く巫女。少しだが、霊的な物を視られるとの噂がある。
神月 ミコ 秘密
つい最近になってから、東雲神社の鳥居近くで不思議な気配を感じるらしい。あなたがそこを調べると……。東雲神社のハンドアウトとその秘密が公開される。
東雲神社
概要:平安時代に建てられたと伝わる古い神社。普段はあまり訪れる者も少ない場所のようだが……?
東雲神社 秘密
実は、神社の鳥居に宿る魔力を利用して、異境に繋がる魔法門が隠されていた。この魔法門を使用するには、任意の魔素2点を消費した上で「鍵」が必要となる。門を開けるシーンはマスターシーン扱いで、シーン数は消費しない。
石原 ケイト(いしはら けいと)
概要:〈禁書〉悪意と憎しみの旋律であり、5年前に封印されて現在は〈大法典〉の外典として働いている第4階梯の魔法使い。がさつな性格ではあるが、仕事はしっかりとこなしている。
今回の魔法災厄に巻き込まれ、過去の幻影に苦しめられているようだ。再び〈禁書〉に戻らぬように、一時的に〈大法典〉が身柄を預かっている。このハンドアウトを調査する場合、シーン表を振らずに〈大法典〉の支部で本人に面会をするシーンとなる。
石原 ケイト 秘密
ケイトは自身が封印された際の事件について深く思い詰めていた。記憶操作されるとはいえ、被害に遭った愚者に謝罪できなかったことをずっと後悔していたのだ。シーンに闇の魔素が1点発生する。
しかし、話を聞こうとした矢先、突如としてあなたの頭上から光が降り注ぐ。《光》で判定を行い、失敗するとシーンプレイヤーは1点のダメージを受ける。
さらに、この秘密が公開された場合、マスターシーンが発生する。
宮崎 奈々(みやざき なな)
概要:分科会の前に姿を現した襲撃者の少女。どうやら、石原ケイトに因縁があるらしい。外典に対して嫌悪感を示している。
宮崎 奈々 秘密
実は彼女は〈焚書官〉の〈書籍卿〉である。魔法名は「絶望の光(ライト・オブ・デスペアー)」。5年前に石原ケイトが禁書だった頃にまき散らした《悪意》の魔法災厄によって、家が強盗被害に遭ったことで家族を喪う。当時出かけていた彼女だけは無事であったが、その絶望によって魔法使いに目覚めた際に〈焚書官〉を名乗る〈書籍卿〉に拾われた。
事件後は拾ってくれた〈書籍卿〉の協力もあり、記憶操作を防ぎつつ自身の魔法の力を隠して復讐の時を窺っていた。その後〈大法典〉の存在、事件を起こした禁書のこと、その禁書が外典となって今も存在していることを知る。
魔法そのものを憎んでおり、魔法災厄を起こしながらも〈大法典〉に従属している外典に対する恨みは相当のものである。
悪に裁きを与えたい禁書、魔法使いとケイトへの復讐という彼女の利害が一致したことで、彼女が禁書「光来する魔鏡の裁き」を解放した。ケイトへの襲撃を仕掛けることで〈大法典〉の魔法使いをおびき出して断罪するのが目的。愚者に対しては、断章が独断で悪と判断した人物のみを攻撃している。
禁書を解放した際、〈断章〉光来に憑依されており、本人もその力を利用している。魔法を世界から消すため、裁きを下そうとしているのだ。しかし、その意識は徐々に断章に蝕まれており、復讐と魔法使いを倒すことだけに意識が傾倒している。1サイクル(4シーン)経過ごとに〈断章〉光来の【憑依深度】が1上昇する。さらに、クライマックスフェイズ時に〈断章〉光来が未回収の場合、彼女は禁書に取り込まれ消滅する。
また、この秘密が未公開かつ〈断章〉光来が未回収の状態で他の断章を回収した場合、戦闘終了後に襲撃が発生する。《光》で判定を行い、失敗するとシーンプレイヤーは1点のダメージを受ける。
※このタイミングで「赤眼の人物」の調査条件②が満たされる。
赤眼の人物
概要:赤い眼をした正体不明の人物。今回の事件に何らかの関わりがあるように見える。しかし、本人の所在は不明である。現在、このハンドアウトを調査することはできない。ある2つの条件を満たすことで調査が可能となる。各条件を満たした場合はGMが伝えること。
赤眼の人物 秘密
東雲神社に魔法門を作成し、オリビニオス監獄の倉庫に潜伏していた。どうやら今回の禁書解放に手を貸したようだ。実は、石原ケイトの元となった禁書を解放した犯人であり、宮崎奈々を〈焚書官〉に誘った張本人。
その正体は編纂を逃れた〈禁書〉赤眼の吊り墓標である。逃れたといってもかなり力が削がれており、その能力は外典に近い性質を持った〈書籍卿〉だ。〈大法典〉を潰すために正体を隠して〈焚書官〉に接触しており、〈大法典〉への恨みが強い人物を探していた。今回の事件では〈断章〉光来を宮崎奈々に憑依させて、実行犯である彼女の能力を向上させた。
神社に作成した魔法門の力を利用して封印結界を奪い、禁書を東雲神社に憑依させることで封土にしようとも画策している。強化した禁書を利用して魔法使いたちを殲滅することが目的だ。
この秘密が未公開の状態でクライマックスフェイズを迎えた場合、禁書は封土(基本p157)のルールを適用して戦闘を行う。さらに、この秘密を自動公開する。
この秘密を公開した場合、「赤眼の吊り墓標」はこの場を立ち去り封印結界を奪うのを諦める。調査後は異境から去るため、戦闘を仕掛けることが可能となる。
クライマックスフェイズ時までに「赤眼の吊り墓標」を撃破していない場合、複数の敵との同時戦闘となり「赤眼の吊り墓標」と「禁書」のどちらかに各PCを振り分けて戦闘をする(各最低1人)。
戦闘に勝利した場合、〈禁書〉赤眼の吊り墓標は力を失い自動的に編纂される。
※調査可能にするための条件
①「東雲神社」にある魔法門を開くこと
②宮崎奈々の【秘密】が公開済み、あるいは〈断章〉光来が回収済みであること
戦闘シーン
断章【裁き】戦
・PCが断章に声をかける
柳生千里が急に怒った表情になり、断章と本人の意識が混ざった様子でこのようなことを言う。
柳生千里:「そうだ……。もううんざりなんだよ。この街は事件ばかりだ!なら私が人々を断罪すれば良いじゃないか!悪さをする奴は私が裁く!」
・PCが魔法名を名乗る
「〈断章〉裁き。魔法使いは私が裁こう!」
・PC勝利
〈断章〉裁きを回収すると、柳生千里はハッとした表情で「私は一体何をしていたのだ?はて、なんだかずっとイライラしていたのが収まってきたようだ。さて、仕事に戻るかねぇ」と言い、店内へと戻っていった。
※〈断章〉光来が未回収の場合《光》で判定し、失敗するとシーンプレイヤーは魔力を1点減少する
断章【魔鏡】戦
・PCが断章に声をかける
すると、天野友美の表情が強張り虚ろな目をしながらこのように話し出す。
天野友美:「あの場所は昔からあって、でも続けられなくてでもなんでこの時のことを思い出させるの?分からない、分からない!」
・PCが魔法名を名乗る
「〈断章〉魔鏡、お前自身の鏡写しに裏切られるがよい!」
・PC勝利
〈断章〉魔鏡を回収すると、天野友美が意識を失って倒れ込む。
しかし、その表情は幾分か和らいでいるように見える。
※〈断章〉光来が未回収の場合《光》で判定し、失敗するとシーンプレイヤーは魔力を1点減少する
解説:天野友美がかつて融資を担当していた六分儀市の地元会社のこと。経営難により、銀行の意向で融資を打ち切らなければならなかったときの出来事を〈断章〉により見させられている。
その理由は、この会社の社員たちが、ケイトである〈禁書〉悪意と憎しみの旋律により、強盗という強引な手段に出たことで、奈々の家族が犠牲となったからである。これについては、本人も八つ当たりに近いことは分かっているが、これも、奈々の復讐の一環ということだ。
断章【光来】戦
描写:あなたが宮崎奈々の元に向かうと、彼女は既に待ち構えていた。
宮崎奈々:「来たわね。私は〈大法典〉を……外典を潰さなきゃ気が済まない。それに、あんたたちの存在を教えてくれた【あの人】にも報いる必要がある。御託は不要。かかってきなさい」
・PCが魔法名を名乗る
「私は絶望の光(ライト・オブ・デスペアー)。そして、〈断章〉光来。私たちの光に裁かれ、絶望しなさい!!」
・PC勝利
〈断章〉光来を回収すると、絶望の光が膝をつく。「私は、まだ……やれる。あんたたちを倒して、家族を……」そう言い残して気を失う。今回の事件に大きく関わっていた彼女だが、犯人の拘束という〈大法典〉の依頼があるため、ひとまず連行することとなる。
補足:猟鬼のPCなど、宮崎奈々を消滅させようとするPCがいた場合でも、ここは〈断章〉の回収が必要なため、とどめを刺す行為は選択できない仕様とする。また、通常は〈断章〉回収と〈書籍卿〉の拘束を両方同時には行えないが、宮崎奈々が気絶したことで両方可能として扱う。
また、この魔法戦に勝利したPCは、〈書籍卿〉の受け渡しをした扱いとする。
・PC勝利(憑依深度4の場合)
〈断章〉光来を回収すると、絶望の光(宮崎奈々)の身体から光が溢れ出し、その輪郭が徐々に崩れ始める。限界を超えて断章の力を行使した代償だ。
宮崎奈々:「光が、消えていく……。お父さん、お母さん……ごめんなさい。あいつらを……魔法使いと外典を、道連れにできなかった……」
彼女は虚空に手を伸ばし、何かを掴もうとしたまま、光の粒子となって霧散した。後には、ただ静寂だけが残った。(※宮崎奈々は消滅扱いとなり、エピローグの展開が変化する)
・運命介入を行い、成功した場合
光となって消えゆく彼女の手を、あなたが強く掴む。
宮崎奈々:「あんた……何をする気!?」
因果を捻じ曲げ、戸惑う彼女をこの世界に無理やり繋ぎ止める。光が収まると、そこには気を失った宮崎奈々が倒れていた。命に別状はないようだ。しかし、その寝顔はどこか、あなたという存在を忘却したかのように安らかだった。
「赤眼の吊り墓標」戦
赤眼の吊り墓標:「やあ。わざわざ私の所まで来るとは、ご苦労な事だ。何か用かな?」
・PCが魔法名を名乗る
「ならば、仕方がない。赤眼の吊り墓標が貴様を墓場に送ってやろう!」
・PC勝利
「やるじゃあないか。だが、まだ〈禁書〉は残っている。君たちがどう立ち回るのか、見られない点だけが残念だよ」
そう言い残して赤眼の吊り墓標は〈禁書〉として封印された。
※猟鬼のPCが勝利した場合、〈書籍卿〉を消滅させた場合と同じ扱いとし、功績点を1点獲得する(封印により、事実上退場させたため)。
クライマックスフェイズ
描写:封印結界が発動し、断章が禁書へと戻っていく。すると、空から円柱のような光が降り注ぎ、そこに〈禁書〉光来する魔鏡の裁きが現れる。いくつもの鏡を身に纏い、眩しいくらいのその姿はまるで、天から舞い降りた裁きの神のようである。
〈禁書〉光来する魔鏡の裁き:「〈大法典〉の魔法使いたちよ。どうして私を受け入れぬ?ただ悪を裁いているだけだと言うのに。むしろ、良い事をしてやっているではないか」
・PCたちが魔法名を名乗る
「〈禁書〉光来する魔鏡の裁き。ならば、お前達こそが悪!私の裁きによって打ちひしがれるが良い!!」
分岐パターンA:赤眼の吊り墓標が参戦する場合(封土化なし)
条件:赤眼の人物の【秘密】が公開されているが、赤眼の吊り墓標を撃破していない場合
描写:禁書がその姿を現した影から、ゆっくりと足音が聞こえてくる。そこには、嘲るような笑みを浮かべた「赤眼の吊り墓標」の姿があった。
赤眼の吊り墓標:「私が残っていることを忘れてもらっては困るなぁ。さあ、ここからは私も混ぜてもらおうか。君たちが絶望に歪む顔を特等席で見たいのでねぇ!」
GM向け処理:この場合、赤眼の人物の【秘密】にある通り、PCを振り分けて〈禁書〉と赤眼の吊り墓標との同時戦闘を行います。
分岐パターンB:封土化完了ルート
条件:赤眼の人物の【秘密】が未公開かつ、赤眼の吊り墓標が撃破されていないままクライマックスフェイズに突入したとき。
※この場合、赤眼の人物の【秘密】にある記述に従い、自動的にその【秘密】が公開され、禁書は封土のルールを得ます。
描写:〈禁書〉が出現すると同時、封印結界の近くにある東雲神社の空気が一変する。 鳥居が赤黒い炎に包まれ、境内の空間がねじ曲がる。神聖なはずの神社の結界が、どす黒い魔力によって塗り替えられていく。その中心で、高笑いを上げる人物がいた。「赤眼の吊り墓標」だ。
赤眼の吊り墓標:「ハハハハ! 遅い、遅いよ魔法使いたち! 君たちがのんびりと『お仕事』をしている間に、準備は完了させてもらった!」
「見たまえ!この神社の結界は、既に私が掌握した。ここはもはや〈大法典〉の守護する土地ではない。我々〈禁書〉のための楽園……『封土』だ!」
「この空間において、理を決めるのは私だ。さあ、ひれ伏すがいい! 圧倒的な力の差というものを、その身に刻んで死んでいけぇ!!」
GM向け処理:
- 「赤眼の人物」の【秘密】を公開する。
- 封土の適用:基本p157「封土」のルールを適用する。
戦闘勝利後
描写:「ばかな、ばかな……。何故私が裁かれねばならんのだぁぁぁあ!」そう叫びながら禁書は封印されていった。
赤眼の吊り墓標を倒した場合
「やるじゃあないか。この私を倒すとは……。だけど、お仲間の方はどうかな?〈禁書〉との戦いが見られない点だけが残念だよ」
そう言い残して赤眼の吊り墓標は〈禁書〉として封印された。
※猟鬼のPCが勝利した場合、〈書籍卿〉を消滅させた場合と同じ扱いとし、功績点を1点獲得する(封印により、事実上退場させたため)。
戦闘敗北時
描写:力及ばず、あなたたちは地面に伏した。魔力は尽き、身体は動かない。禁書「光来する魔鏡の裁き」は、勝ち誇ったようにその輝きを増していく。
「ハハハ!所詮はその程度か、魔法使い!ならば消えるが良い。この街と共に、裁きの光に焼かれてな!!」
上空に巨大な魔法陣が展開され、街全体を押し潰すような巨大な光の拳が形成される。それが振り下ろされれば、あなたたちは確実に消滅するだろう。
ここで、死亡しているPCは【復活】を行える。敗北宣言など、死亡せずに〈禁書〉戦に敗北した場合は不要。
分岐A:誰か一人でも生存(復活成功)している場合(※生存しているPC視点で描写)
描写:薄れゆく意識の中で、あなたは見た。光の拳が振り下ろされるその瞬間――。
『――させないよ』
凛とした声と共に、空間が裂け、目にも留まらぬ速さで現れた光が禁書の攻撃を弾き飛ばした。そこに立っていたのは、円卓の魔法使い、愛沢楓だ。
愛沢楓:「【復活】はできたみたいだね。良かった。……ケイトがね、『俺のメンタルケアなんてどうでもいいから、あいつらの所にさっさと行ってくれ!』って」
「君たちの頑張りは無駄にはしない。後は私に任せて、少し休んでいて。皆を傷つける〈禁書〉は、この『光の救済者ヘザー』が許さないから」
彼女が魔法名を名乗り、指を鳴らすと〈呪圏〉が展開され、あなたたちを追い込んだ〈禁書〉に対する圧倒的な怒りのような魔力が空間を支配する。あなたたちにとって、それは一瞬の出来事だった。彼女の術式によって〈禁書〉は拘束され、本へと戻っていく。
……しかし、一度封印に失敗した以上、完全に被害を抑え込むことはできない。意識が薄れゆく中、あなたたちの目には、降り注いだ光の余波によって破壊されたビルや、逃げ惑う人々の姿が焼き付くだろう。
解説:愛沢楓によるPCたちの救援シーン。ただし、禁書の攻撃が一部発動してしまったため、六分儀市は甚大な被害(建物倒壊、多くの負傷者など)を受けることとなる。
その後、エピローグへと合流する。また、エピローグ冒頭の愛沢楓のセリフが以下のように変化する。その後、宮崎奈々の生存による分岐以降の内容へと合流する。
敗北時差分:
「……気が付いた?身体の方は大丈夫そうだね」
愛沢楓は痛ましげな表情であなたたちを見つめる。
「禁書は無事に封印できた。でも……街の被害は小さくない。復興には時間がかかると思う。それでも、君たちが時間を稼いでくれたおかげで、最悪の事態だけは免れた。生きて戻ってきてくれてありがとう」
「さて、それじゃあ報告と……今回の処遇について話をしようか。ここからは、依頼人として話させてもらうね」
分岐B:PC全員が復活判定に失敗し、全員の消滅が確定した場合(全滅ルート)
描写:誰も、立ち上がることはできなかった。無慈悲な光があなたたちを飲み込み、そして六分儀市の街をも飲み込んでいく。意識が完全に途切れるその最期に、遅れてやってきた誰かの悲痛な叫び声が聞こえた気がした。
結末:PCは全員消滅(ロスト)。六分儀市は壊滅的な被害を受け、魔法災厄は最悪の結末を迎える。(※シナリオ終了となります)
エピローグ
あなたたちは報告のため、〈大法典〉支部に戻ることとなる。
分岐A:宮崎奈々が生存している場合
すると、あなたたちに依頼をしてきた円卓の魔法使いの愛沢楓だけでなく、石原ケイトと宮崎奈々の姿もあった。ひとまず、あなたたちは今回の経緯について説明を行った。
愛沢楓:「ご報告ありがとうございます。禁書の回収、お疲れ様でした。それでですね、宮崎奈々についての処遇についてなのですが……。禁書を解放し、その力を利用したこと。これ自体はそれ相応の罪に問われるでしょう。ただ……」そう言った後、口調を崩しながらこのように話し出す。
「ここからは私個人としての考えなんだけどね、経緯を考えると情状酌量の余地はあると思う。でも、やった事自体は変わらない。どう判断したものか迷ってる」
「だから、今回の件を実際に現場で見た君たちが感じたこと、それを教えて欲しいんだ。この子をどう裁くべきかを。彼女を魔法使いとして〈大法典〉で管理するか、それとも、危険な存在として排除するのか、あるいは……その判断を、現場の君たちに任せたいんだ」
PCたちが相談して、宮崎奈々の処遇を決定する。以降のセリフは処遇に応じてある程度変更しても良い。
「うん。分かった。教えてくれてありがとう。本当は勝手に決めちゃダメなんだけど、私が責任を持ってそのように判断したってことにしておくから、そこは安心して」
彼女はそう微笑むと、石原ケイトの方を向いて話しかける。
「あと、ほら!君、この子に謝りたいんでしょ?自分で呼ぶように言っておいて、そのまま帰るのは無しだよ!」
そう呼ばれて、石原ケイトが魔法で少し引っ張られる。
石原ケイト:「いてて、分かってるよ!」
ケイトは宮崎奈々の方を向いて謝罪の言葉を述べようとするが、あまり落ち着きがない様子だ。緊張しているのかもしれない。
PCが激励したり、声をかけるなど何らかのアクションをすると、意を決して話し出す。
「奈々、お前には本当に悪い事をした。すまなかった。謝って許されることじゃねぇのは分かってる。ただの自己満足だ。それでも、ずっと後悔していた」
「魔法使いとして働く中で、お前と同じようなひどい目にあった連中を何人も見てきた。俺と関わった人間が犠牲になったこともあったんだ。今ならお前の苦しみも少しは理解できる。だからこそ、お前に謝らなくちゃ前に進めねぇと思ったんだ」
すると、奈々は少し眉をひそめるがすぐに元に戻りこう答える。
宮崎奈々:「そう……。悪いけど、あんたを許すつもりは無い。けど、私も同じようなことをしちゃった。それに、外典にも反省している奴がいるってことは理解した。ただ〈大法典〉に働かされてるってだけじゃないんだね」
「私も悪かった。ごめんなさい」
分岐A-1:奈々を許す、捕らえるなど消滅させる方向でない場合
「さて、魔法災厄をまき散らした者同士、今後もお互いに反省して生きていきましょうね。途中で倒れたりしたら許さないから。当然、あんたたちもね。では、ごめんあそばせ」
分岐A-2:奈々を消滅させる、封印する方向の場合
「さて、私はじきに居なくなっちゃうけど、あんたは精々頑張りなさい。途中で倒れたりしたら許さないから。当然、あんたたちもね。では、ごめんあそばせ」
そういってケイトとあなたたちを見やった後、彼女はなんだか少しすっきりとした表情で、その場を立ち去っていった。
最後に任意でPLがやりたいエンディングを演出する。
その後以下の描写をして終了。
こうして、あなたたちは禁書の封印を終えた。今回の件で色々と思う者もいるかもしれない、今後あの二人がどうなっていくのか。あなたたちがこれからどのように、魔法災厄と向き合っていくのか。それはまた別のお話である。
分岐B:宮崎奈々が消滅した場合
愛沢楓:「ご報告ありがとうございます。禁書の回収、お疲れ様でした」
あなたたちが報告を終えると、愛沢楓は痛ましげな表情で、あなたたちと同席していた石原ケイトを見つめる。それを見たケイトが、重い口を開く。
石原ケイト:「そうか。あいつは……奈々は、消えちまったか」
ケイトは悔しそうに拳を握りしめ、しばらく俯いていたが、やがて顔を上げる。
「謝って済む話じゃねぇ。俺が蒔いた種だ。でもよ……せめて一言、直接詫びたかったな」
「魔法使いってのは因果な商売だ。あいつみたいな被害者を出さないために俺たちは戦ってるはずなのに、その戦いがまた新しい被害者を生む。……笑えねぇ話だよ」
「今回の件、あいつを止められなかった俺の責任だ。あいつの供養は俺に任せてくれ。……ありがとな、最後まで付き合ってくれて」
ケイトは寂しげな背中を見せながら、部屋を去っていった。
愛沢楓:「魔法使いをやっていると、つらい経験をすることもある。だけど、それでも進まなくちゃいけないときがあるんだ。君たちもお疲れ様。もし、困ったことがあったら、何でも相談して。これは、円卓としてじゃなくて、私としての言葉」
少し息をつくと、彼女は、あなたたちに語り掛ける。
「魔法使いの消滅は、世界からの痕跡を消してしまう。だから、宮崎奈々のことも、いずれ忘れちゃう。でも、これだけは覚えていて」
「魔法災厄という悲劇を起こすのは魔法だけど、そこから救えるのもまた魔法だってこと。だからこそ、私たちは、それができるように、力を付けなくちゃいけない。皆ならまた前に進める。私は、そう、信じているから」
彼女はそう微笑むと、報告書を抱えて部屋を立ち去った。
こうして、長く苦しい戦いは幕を下ろした。救えなかった命、消えゆく記憶。その痛みを知る者だけが、強くなれるのかもしれない。ケイトがどうなっていくのか。あなたたちがこれからどのように、魔法災厄と向き合っていくのか。それはまた別のお話である。
敵データ
断章【裁き】
ステータス
攻撃力:4 防御力:2 根源力:3 魔力:7
特技《衝撃》
領域:力
蔵書:鉄槌(スマイト)、書刑(ジャッジメント)
断章【魔鏡】
ステータス
攻撃力:3 防御力:4 根源力:3 魔力:6
特技《裏切り》
領域:闇
蔵書:書影(ミラージュ)【裏切り】、魔鏡(ミラー)
断章【光来】
ステータス
攻撃力:4 防御力:3 根源力:3 魔力:7【初期憑依深度】2
特技《光》
領域:力
蔵書:看破(ディテクション)、検閲(レビュー)
〈焚書官〉「赤眼の吊り墓標」
ステータス
攻撃力:4 防御力:4 根源力:4 魔力:9
特技《炎》《狂気》《死》魂の特技:無慈悲
領域:闇
蔵書:緊急召喚、騎士召喚【炎】、禁呪(タブー)、屍型(レイス)【死】、速読(ヘイスト)、狂乱(フレンジー)【狂気】、入滅(デス)
〈焚書官〉「絶望の光(ライト・オブ・デスペアー)」
ステータス
攻撃力:3 防御力:3 根源力:3 魔力:7
特技《天空》《炎》《絶望》魂の特技:光道
領域:力
蔵書:緊急召喚、騎士召喚【絶望】、唱面(キャストフェイス)、焚書(ライブリサイド)、火花(スパーク)【炎】
〈禁書〉光来する魔鏡の裁き
ステータス
攻撃力:4 防御力:4 根源力:3 魔力:20
特技:《衝撃》《光》《裏切り》
領域:力
蔵書:鉄槌(スマイト)、書刑(ジャッジメント)、書影(ミラージュ)【裏切り】、魔鏡(ミラー)、看破(ディテクション)、検閲(レビュー)
あとがき
今回のシナリオは、常闇の手帳を執筆後、「マギカロギア特有のシリアス」を体現するシナリオを作成しようと思い、執筆したシナリオです。
外典という存在の多くは、かつて〈禁書〉として魔法災厄を起こしているということで、それに対して強い罪悪感を持つ外典と、その外典が〈禁書〉のときに起こした魔法災厄の被害者。そんな被害者が、〈焚書官〉という、魔法を消すために魔法を使う存在に身を寄せる。しかし、被害者を誘った存在こそ、外典の元となった〈禁書〉を解放した外典のような人物で……という構図です。
シナリオ公開にあたり、バッド寄りの描写を中心に加筆を行い、上手くいったときとは別のマギカロギア特有の切なさを増やせたかなといった印象でした。改めて見ると、正確な時系列を把握するには情報を繋ぎ合わせる必要があるため、その点においても、まとめがいがありましたね。
宮崎奈々の〈禁書〉への転化について
作中では赤眼の吊り墓標の狙いとして「彼女の絶望を利用した〈禁書〉への転化(基本p201)」を匂わせていますが、本シナリオのメインルートにおいて、実際に彼女が転化するシーンは発生しません。
理由としては、エピローグで宮崎奈々生存時に赤眼の吊り墓標の悪事や事実を伝えたとしても、その時点ですでに彼女は〈断章〉光来から切り離されており、〈大法典〉によって捕縛・保護されているためです。落ち着くための時間と環境があるということになります。
もし可能性があるとすれば、宮崎奈々が生存かつ、赤眼の吊り墓標の目の前に連れて行った場合ですが……。もし、二人を対面させたとしても、赤眼の吊り墓標が健在なら戦闘に入りますし、倒したらそんなことを言う前に封印されてしまいます。
そのため、「赤眼が奈々を煽って絶望させ、その場で転化させる」という展開は、発生する隙がなく、実現することはありません。あくまで、もしPCたちが一切の干渉をせず、彼女が完全に赤眼の掌の上で躍らされ続けていたら、そうなっていたかもしれないという、あり得たかもしれない最悪の結末の一つです。
おまけコーナー:愛沢楓を【立会人召喚】したらどうなる?
彼女の階梯は、シナリオ制作時は第4階梯でしたが、2025年12月時点では第5階梯です。しかし、本シナリオの推奨階梯(第3階梯)とのバランスを考慮し、NPCデータとしては第4階梯として扱ってください(それでも司書が増えるのは十分強いですが)。
ちなみに、もし第5階梯の彼女を立会人として呼ぶと、【護力】と蒐集魔法の【宿蟲】があるため、外付けとしては明らかなオーバースペックになります。魔法戦と言う2秒程度の話を彼女視点で断る理由がないのですが、もしPLから召喚を提案された場合は、GMとしてやんわりと断るか、演出上の登場に留めることを推奨します。
joni_momonga
本作は、「著:河嶋陶一朗/冒険企画局、新紀元社」が権利を有する『魔導書大戦RPG マギカロギア』の二次創作作品です。(C)冒険企画局/新紀元社/河嶋陶一朗「魔導書大戦RPG マギカロギア」
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